黒い服でワルツを

砂糖漬けの果物がこぼれて、

ぷかぷか浮かぶ

高校三年生のわたしはGO!GO!7188の神様のヒマ潰しを日課のように聴いていた。

神様のヒマ潰し

神様のヒマ潰し

18歳のわたしはGO!GO!7188のライブ(@仙台JUNKBOX)にも行って、トートバッグを買って、ギターとベースとドラムという最小単位が織りなす、見透かされたような楽曲に魂をとろかされた。
そのときわたしがすきだった人は、わたしよりも年上で、いつもオシャレにスーツを着こなし、めんどくさがりやで頭の良い人であった。
その人と離れたくない一心で進路を決めたけれど、わたしとその人は彗星のように遠ざかって、10年経ってやっと、ああもう交わることはないのかもしれないと思った。
10年という歳月はぷかぷか浮かんだ梨の実がお酒になってしまうよりも長くて、死んだ女を待つ歳月よりも短い。
その間に何が変わったのか、何も変わってないのか、ほんとうのところはよくわからない。(それが自分のことであっても)
ただ変わりゆく感受性の中で(そしてどんどん愚鈍になる受容体の中で)この歌だけは今でもわたしの心を貫いたままだ。

このところの 不安な夜は 胸の奥の奥が ちりちりと鳴き通す

たくさんの考えなければならないものごとを後回しにして、たくさんのものたちを手から零して、生きてきてしまった。
ほんとうはただ雨の夜に手を繋げられればよかっただけなのに。

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景色が色を失っていく。

ビニール傘はすこしだけ世界を柔らかくする。

まだ大人になりたくないってわがままはもう言えないセプテンバー。


シロップで溺死、なんてね 雨の日も離れて歩くぼくのわがまま